桜が散るように ー 新撰組 ー



入室してきた山崎の真剣な表情が、和やかな雰囲気を一変させた。

桜は向き合っている二人から一歩下がって腰を下ろした。


それと同時に、山崎が開口した。


「…動き出しました」


誰が、という主語がついていないが、土方には分かったらしい。


「……そうか」

「数年前に噂になった辻斬り、そして神隠し。どうやら」

「そいつ等の仕業、か」

「はい」


土方は一回、目を閉じ、そして開ける。


「桜」

「は、はいっ」

「お前の初仕事だ」


―――“初仕事”

桜は心の中で復唱した。

冷や汗がひとつ、背筋を伝うのが気持ち悪い。


これに頷けば……確実に戻れなくなる。


何処に、なんて分からないが。




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