桜が散るように ー 新撰組 ー
薄暗い世界に足を踏み入れることになるのだろう。
そして、後退など出来ず、暗闇に進むしかなくなるのだろう。
(でも、…でも私は)
「分かりました」
桜は笑顔で答えた。
きっと、誰かを殺すことになる。
それは土方の心配そうな顔で分かった。
それで笑顔になるのは不謹慎だ。自分でも思う。
しかしなおも笑顔で続ける。
「山崎さんの特訓は、そのためだったんでしょう?」
山崎からうけた特訓は
“実戦用”。
どうしたら効率的に戦えるか。
「私、やります」
「……」
手に汗握っている拳が、震える。
自ら、進むことになる。
逃げる言い訳も、出来ない。
「……良いんだな?」
土方が、確認してくる。
その目には、隠しきれてない心配が、ありありと映っていた。
「…自分で決めたことに筋を通さないのは、カッコ悪いじゃないですか」
桜は浮かべた笑みを消して、続けた。
「その仕事、受けます」
この日が
桜の運命の分岐点だった。