桜が散るように ー 新撰組 ー
数日後の日暮れ頃。
暗くなると同時に活動を始める二つの影。
「山崎さん」
「何だ」
「…普通の町人の格好で良いんですか?」
影――桜と山崎は、地味目な物ではあるが、それぞれ一般人に紛れるような服装をしている。
「今回の任務は宿屋に集まる危険人物の監察及び暗殺だ。副長から聞いてないのか」
「え、何かすみません…」
「まあ良い。服装の理由だが、宿屋に忍び込むなら、真正面から堂々と入った方が怪しまれない」
スタスタと、足を止めず、こちらも見ずに話す山崎と、
ほほぅ、と感心しながらついていく桜。
「ちなみに、夫婦という設定だ」
「へぇ、夫婦ですか。それなら怪しまれな――は?え、夫婦!?ちょ、山崎さ」
「ん、ここだな」
目当ての宿屋を見つけ、一人先に入る山崎。
「………マジですか」
*********
(今は任務……任務任務任務。だけど!)
「なんで布団がひとつなんですか!?」
ビシィッ!と
畳に布かれた布団を指差して山崎に迫る。
「……、夫婦(設定)だからな」
これは山崎も予想外だったらしく、返事に覇気が無い。