桜が散るように ー 新撰組 ー
桜はまだ残る眠気を醒ますべく、両頬をパシンッと一回叩いた。
そして、決意を宿した瞳で返事をした。
「…はいっ」
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「……――せ」
「――が、…ろ」
屋根裏まで、微かに聞こえてくる、三人の低い声。
どうやら全員、成人した男性らしい。
「…アレが、今回、任務の対象となる奴らだ」
山崎は小さな声で言う。
桜は1つ頷いた。
(あの人たちが――)
以前、噂になった辻斬り。そして神隠しを行ったと言われている。
桜は耳を澄ませ
会話を聞くことに集中した。
「…しかしなぁ、本当にあんな事が出来るとは…なぁ、芳野(ヨシノ)」
「俺は何回もしたから、なんとも思わないなぁ」
芳野と呼ばれたその男は
笑みを浮かべながら、猪口に注がれた酒を口に含む。
(若い…な。私より少し年上なんじゃ…)
「辻斬りだの何だの言われ、捕まりそうになったがな、芳野がいるかぎり捕まらねえな!」
「ガッハッハ!違いねえ!なぁ芳野!」
二人の男は、
豪快に笑いながら芳野の肩を叩く。
しかし
「…それはどうかなぁ」
芳野はおもむろに帯刀していた刀を抜き、天井へ投げた。