桜が散るように ー 新撰組 ー



桜はまだ残る眠気を醒ますべく、両頬をパシンッと一回叩いた。

そして、決意を宿した瞳で返事をした。


「…はいっ」



********


「……――せ」

「――が、…ろ」


屋根裏まで、微かに聞こえてくる、三人の低い声。

どうやら全員、成人した男性らしい。


「…アレが、今回、任務の対象となる奴らだ」


山崎は小さな声で言う。
桜は1つ頷いた。


(あの人たちが――)


以前、噂になった辻斬り。そして神隠しを行ったと言われている。


桜は耳を澄ませ
会話を聞くことに集中した。


「…しかしなぁ、本当にあんな事が出来るとは…なぁ、芳野(ヨシノ)」

「俺は何回もしたから、なんとも思わないなぁ」


芳野と呼ばれたその男は
笑みを浮かべながら、猪口に注がれた酒を口に含む。


(若い…な。私より少し年上なんじゃ…)


「辻斬りだの何だの言われ、捕まりそうになったがな、芳野がいるかぎり捕まらねえな!」

「ガッハッハ!違いねえ!なぁ芳野!」


二人の男は、
豪快に笑いながら芳野の肩を叩く。

しかし


「…それはどうかなぁ」


芳野はおもむろに帯刀していた刀を抜き、天井へ投げた。




< 124 / 242 >

この作品をシェア

pagetop