桜が散るように ー 新撰組 ー



「―――っ!」

「なっ!?」


その刀は
屋根裏に潜んでいた山崎と桜の間に突き刺さった。


「出てきなよ」


芳野のその言葉に
山崎は応えるように降り立った。

桜もそれに続いた。


「…よく分かったな」

「気配には敏感でねぇ」


ニコニコと
余裕を見せる芳野と


「だ、誰だお前らぁっ!!?」

「どこが差し向けた野郎だ!」


動揺を隠しきれず
抜刀する二人の男。

桜はそれを一瞥し、暗器をいつでも出せるようにした。



「我等、新撰組。今回の任務は、お前達が例の辻斬りかを監察。そして、それが真実だった際の―――暗殺」


山崎が律儀に答えた瞬間


「誰が、みすみす殺されるかよぉっ!」


一人が、桜に襲いかかる。

一直線に桜の脳天を狙う白刃。

だが
桜は素早く襟からクナイを出し、刀を片手で防ぐ。

そして
相手の懐に入り
もう片方の手で、心臓にクナイを突き刺した。


「―――っ」


一瞬の事で
声も出せずに絶命した。


「っは、はぁっ」


桜は荒々しい呼吸になる。


(今、今、私――殺した)


やらなきゃ、やられる世界だった。


(それでも私――この人や、この人に関わってたすべての人達の人生を…狂わせたっ)


一分にも満たない攻防で
一つの命を終わらせた。



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