桜が散るように ー 新撰組 ー


(ダメだ)


桜は唇を噛む。


(ダメだ。ダメだ。動揺するな、私。覚悟は、したはず)

(思っちゃダメだ。―――帰りたい、なんて)


ぐっと表情を引き締め、芳野と視線を合わせる。

…が


「……桜?」

「――!!?」


目を見開いた。
芳野は、この人は


(私を……知ってる?)


そんな疑問で頭がいっぱいになる桜の横で
やはり、僅かに目を見開く山崎。


「ああ、やっぱり桜か」

「……何で、私のこと…知ってるの」


緊張で、声が震える。

一方
芳野は未だに笑顔だ。


「『また』俺を忘れた?じゃあ自己紹介をしなきゃね」


(また?忘れた? …どういう意味?)


混乱する桜をよそに
芳野は桜に向かって言葉を放つ。


「久しぶり、…いや、はじめましてかな、川瀬桜さん。俺は―――川瀬芳野だよ」

「えっ」






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