桜が散るように ー 新撰組 ー



思考がゴチャゴチャになる。

目の前の、『川瀬芳野』と名乗る男。


(同じ、名字――…)


そこまで珍しくもない名字だが…、
芳野の笑顔が
何か不安を煽る。


バクバクとウルサい心臓を押さえる。

だが


「お、いっ、芳野!逃げるぞ!早く行くぞ!」


芳野の仲間が逃走を急かす。

しかし芳野は応じない。


「ヤだよ。逃げるなら君一人で逃げなよ」

「っに言ってんだよ!?お前が居なきゃ、あの術―――」


その瞬間。
芳野が握る刀が男を切り裂いた。


「ぐ…ぁっ、芳、野。てめっ」

「あーあ、何この刀、斬りにくいなぁ。手入れしてる? それにさぁ、君は逃げなくても良いでしょ?」


ニヤリと笑う芳野。


「俺が殺すんだから……用済みだしね」


そのセリフが終わると共に、芳野の仲間は倒れた。

そして芳野は
山崎と桜を振り返る。


「ダメな奴の刀はダメだね。そのダメな刀でも……俺は君らと戦えるよ?」


どうやら芳野が今持っているのは、今し方、亡くなった男の刀らしい。

所々、刃こぼれをしているソレ。

そのため、変に光が反射して、不気味だ。




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