桜が散るように ー 新撰組 ー



震える手で、クナイを構えなおす。

(分からない分からない。この人の正体も、この不安も)

(でも……ひとつだけ)


視線を横にずらせば
指と指の間に幾つもの手裏剣を挟んで、芳野をジッと見る山崎がいた。

山崎は、落ち着いている。

それを確認しただけで幾分か楽になった。


桜も芳野を見つめる。


(ひとつだけ、分かる)

(この人は―――敵だ)


「へぇ…。成長したね、桜。人に武器を向けれるようになるなんてね」


また、だ。
また昔のことを知っているかのような口振り。


「黙って、ください。私のことを知っていようが、敵は敵です」

「……へぇ」


芳野の口が三日月型につり上がる。

不気味で、歪で、しかし美しいその笑み。

細められた目は、桜の視線とかち合う。


「桜。君は俺を思い出す」

「え、…っ」


急に頭が痛み出した。
視界が白黒に点滅し出す。
頭を押さえようとするが
芳野の視線のせいで動けない。


「思い出して。じゃないと俺は――」

「……ぅ」


目をそらせない。





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