桜が散るように ー 新撰組 ー
頭が、痛い。
(私、何かを忘れてる――?)
漠然と、そう思った。
そして、確信する。
目の前にいるこの人は、それを知っている、と。
その時、
脳裏に一瞬、どこか懐かしい村の風景が浮かんだ。
そして同時に
「っあ!」
頭痛が酷くなる。
頭を締め付けられているような痛みだ。
「川瀬桜」
ふと、視界が黒で塗りつぶされた。
温かいものが目を覆っている。
「落ち着け、…一種の暗示だ」
「山崎さ、ん…」
低く囁かれた声が鼓膜を振動させる。
視界が塞がれ、芳野と目を合わさなくなったからか、頭痛は止んだ。
「川瀬芳野、と言ったな」
「あぁ、そうだね」
「……去れ」
山崎は桜を腕の中に収めたまま芳野と会話を続ける。
「あれ、俺のことを見逃すの?」
「今回は、な。だから去れ」
「俺としては、桜も連れて行きたいんだけどなぁ」
「……、コイツは、新撰組の一員だ。敵に渡すわけにはいかない」
カチャリ、と金属音が鳴る。
山崎が手裏剣を構えなおしたらしい。