桜が散るように ー 新撰組 ー



なので、目を覆う大きな手のひらは無くなり、視界がクリアになった。

真横にいる山崎は桜を見ず、ただ敵を見つめながら開口した。


「お前は後ろに下がってろ」

「……っ」


心配や同情で言われた優しい言葉なんかじゃ、ない。

それは『戦力外通告』。

戦いの場において、お前は邪魔だ、と。


「で、でも…山崎さん!」

「『でも』じゃない。今の心境じゃ、お前は戦えないだろう」

「そ…う、かもしれませんけど…」


確かにそうだ。
敵の言葉に動揺した。
それを悟られている。


(あの人が私に不意打ちで切りかかってきたら…)

(きっと、死んでた)


見知らぬ人に名前を呼ばれたこと、
過去を知っているような口振り、
そして
色んな感情が混じった黒い瞳に在る悲しみと―――明確な殺意。

すべてが予想外だった。



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