桜が散るように ー 新撰組 ー
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地平線から太陽が姿を見せ始めた頃
山崎と共に屯所に帰ってきた桜は、土方が待っているであろう部屋に向かった。
カラリ、と襖を開けると
土方が文机に向けていた身体をこちらに向けた。
「…戻ったか」
「はい」
「……、はい」
「報告は」
その言葉をキッカケに山崎は話し出す。
辻斬り、そして神隠しに関わっていたであろう三人。
二人は死亡を確認、逃した一人は、おそらくかなりの実力者。
名前は……
「川瀬芳野―――そう名乗っていました」
「………川瀬?」
畳をジッと見るが、土方の視線を感じる。
土方の目が、見れない。
「どういうことだ」
「……川瀬、芳野さんは…たぶん私のことを知ってます」
未だ視線は下に向けたまま答える。
「でもお前のことを知ってる奴は」
「いないはず、です。だって私は――」
未来から、来たのに。
この時代で自分を知っている人なんて、絶対、いないはずなのに。
でもあの人は…
「土方さん…、お願いがあります」
桜は顔を上げて、土方を見つめる。
「時間を、ください。監察の仕事も、女中の仕事も、部屋の片付けもします。お願いです、私が私を調べる時間を、ください」