桜が散るように ー 新撰組 ー
********
「どアホ」
俺は藤堂の頭に再び拳を落とす。
涙目になる藤堂。
泣くなよ男のくせに。
「なんで土方さん、怒ってんの…」
「桜に、あんなこと訊くな。言うな」
「はあ!?」
「それが出来なきゃ、黙っとけ」
意味わかんね、と首を傾げる藤堂を、俺、兼、桜の部屋の前に連れて行く。
襖を少しだけ開けると
「なあ土方さん…」
「……」
「桜、何してんだ?」
部屋の中の桜は、紙袋で口と鼻を覆い、ゆっくり息をしていた。
「任務の日から、ずっとだ。息がうまく出来てない。本人曰わく『過呼吸』だそうだ」
「過呼吸…」
「辛そうにしてる、苦しそうにしてるが、ああやって一人でなんとかしてる。……人を殺して、精神が不安定になってる」
桜は、ここ数日
あまり眠れていない。
息苦しさで目が覚めるようだ。
「たぶん、お前に否定してほしかったんだろ。人を殺して、自分を正当化してしまうのが嫌で、言って欲しかったんだ。『そんなお前はキライだ』ってな」
「………土方さん」
「肯定しようが否定しようが、桜は傷つく。塩を塗るな。桜にそうさせてやるな。自分で整理させてやれ」
山崎が言うとおり
此処じゃ、『殺し』が出来なきゃ生きていけねえぞ、桜。
生き延びたければ牙を持て。
牙を使い続ける覚悟を決めろ。