桜が散るように ー 新撰組 ー
見知らぬ故郷
その日の夜。
もう寝ようと、布団に入ろうとした桜を、土方が止めた。
「え、なんですか?」
「ちょっと待て」
土方は仕事で凝った肩をグルグルと回しながら押し入れに近づく。
「? 土方さーん?何して…わぷっ!?」
押し入れを開いて取り出したものを桜に向かって投げた。
眠さでボーっとしていた桜は避けることができず、視界が水色で覆い隠された。
手にとって見てみると
「ひ、じかたさん…」
「あぁ」
鮮やかな浅葱色。
それは《新撰組の象徴》である羽織りだった。
「良いんですか…」
「俺は、監察の奴らにもコレを渡している。同じ新撰組の仲間だからな」
「仲間…」
「お前が、此処で生きる覚悟を決めたら渡そうと思っていた」
桜は羽織りを抱きしめる。
待っていてくれた。
そのことが身にしみる。
「えへへ、よろしくお願いします!」
桜が頭を下げると、土方は桜の頭を撫でて
「あぁ、改めてよろしくな」
と言った。