桜が散るように ー 新撰組 ー
緩く首を横に振って
「何も。川瀬家に関することは、ただ、滅んだとしか」
と言った。
山崎は「そうか」と頷いた。
「お前の両親はどんな人達だったんだ?」
「二人とも、修行のときは厳しくて、それ以外ではほのぼのとしてて、暢気で………優しい、人達でした」
昔を思い出して、桜は自然に笑顔になる。
「お父さんは、休日には釣りに連れていってくれました。全然釣れませんでしたけど。お母さんはそれを予想して、魚料理を作って待ってました。お父さんはガックリしてましたけど!」
二人はお互いに分かり合っていて、これが夫婦なんだと思った。
幼いながらに、二人が愛し合っていたことは分かりきっていた。
「ただ、二人の子供が……私のお兄ちゃんに当たる人が、私が小さい頃に亡くなってしまったらしくて、命日は泣いていましたが、それ以外は笑顔で」
温かい、幸せな家庭だった。
それが続くと思っていた。あの事故までは。
「大好きだったのに。大好きな人達のために、私は泣くことが出来ないんです」
自嘲するように眉の端を下げて微笑む。
「私、自分で思っていたより薄情なんですかね……」
「………」
「―――なんてね!やだな、冗談ですよ!号泣しました!」
じゃあそろそろお暇します!と言って立ち上がろうとすると
山崎に手を引っ張られ、山崎に抱きつく形になってしまった。