桜が散るように ー 新撰組 ー


山崎は顔を少し顰めたあと、パフッと本を閉じる。

本を覆っていた埃が少し落ちる。


「なんか分かりました…?」

「いや、煤が酷くて読めなかった。所々見えた文字からして、御伽噺らしいな」

「そうですか…、ありがとうございます」


御伽噺なら、村のことには関係ないだろう。と思った桜は、ポツポツと雨が降り出したことに気がついた。


「雨か」

「暫く此処にいましょうか。屋根がある家なんて他に何軒も無いですし」


桜の言葉に、山崎は一つ頷いてから、また物色しだす。

小雨だった雨はしだいに激しくなり、ゴロゴロと遠くから雷の音が聞こえる。


あらかた家の中を見た桜は、何もすることがないので、雷が光ってから音がするまで何秒あるかを数える。


(いーち、にー、さーん……五秒か。えーと、音速は約360m/秒でしょ?つまり……1800m先で雷が落ちたのか!よし、まだ遠い!)


指折り数えていると


「……っ」


山崎が息をのむ音が聞こえた。
桜が振り返ると
先ほどとは違う本を持っていて、目は驚愕で見開かれている。


「ど、どうかしましたか?」


山崎があそこまで表情に出すのは珍しいので訊ねると、山崎は首を横に振り


「いや、違う。俺の勘違いだ、気にするな」

「はあ…」


なにが勘違いなのかはよく分からないが、知られたくない様子なので追及はしないでおいた。




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