桜が散るように ー 新撰組 ー
しばらくすると、雷がまだなっているものの、雨が小雨になったので一旦外に出ることにした。
地面がぬかるんでいて歩きにくいうえに、空を雲が覆っているため暗く、足元がよく見えない。
「わー。こんな天気のときに山で迷っちゃったら最悪ですよね」
「そうだな。辺りの山は獣道くらいしか見当たらないしな」
「子供だったら出てこれないですよね!」
この山で暗いなか、遭難してしまったら
子供じゃなくても怖くなるだろう。
そう考えたその時、
ツキンと頭が痛む。
―――『おにいちゃんなら、さくらが迷っても見つけてくれるもんねー!』
―――『見つけてくれてありがとう…おにいちゃん』
頭の中で響く、幼い子供独特の高い声。
(この声…もしかして、私?)
(じゃあ『おにいちゃん』は、昔亡くなってしまったっていう…)
考え込んで立ち止まってしまった桜に、山崎は振り返って声をかける。
「何してる。また天気が崩れそうだから、帰るぞ。走れ!」
「ぅえ!?あ、はい!」
山崎の背を追って、村を出た。