桜が散るように ー 新撰組 ー
それから、山崎の言ったとおり再び大雨になる前に帰り着くことができた。
「収穫無しかぁー。すみません山崎さん、せっかく案内してもらったのに」
「いや…」
「なんか、顔色悪くないですか?」
「……。なんでもない」
「?」
やはり様子がおかしい。
あの本を見たときから。
(あれに一体何が…)
山崎が語らないということは、きっと知るべき時ではないのだろう。
その時がくれば、話してくれるはずだ、と思い、山崎に手拭いを渡してから各々の部屋へ帰った。
「帰りましたー」
「おぅ。おかえり」
「ただいまです!」
襖を開けると、ちょうど休憩していたのだろう土方が、筆を置いて自らの肩を揉んでいた。
土方は桜に座るように促し、向き合った。
「どうだった?」
「いや、まぁ……戦の爪痕が凄かったです。それ以外、収穫が無かったです。あははっ」
「そうか、まあ焦らずにな」
「はい!」
桜が元気よく返事をすると、土方は微笑して、伸びをする。
ずっと書類とにらめっこしていたから肩が凝ったのだろう。
「……肩叩きしましょうか?」
「お、良いのか?」
「はい」
「じゃあ頼む」
そう言った土方は、桜に背を向ける。
桜は、土方の肩に手を置いて、力を入れてマッサージをするが、かたい。
「そうとう凝ってますねー」
「ああ、最近ずっと文机と向かい合ってるからな。……と、もうちょい下だ」
「ここら辺ですか?」
「ああ」
叩いてマッサージをして、を繰り返していると、ようやくほぐれたらしい。
「よし、終わり!」
「おっ、肩が軽いな」
土方は、肩をグルングルンと回して、効果のほどを確認している。