桜が散るように ー 新撰組 ー


桜は、えっへん!と胸を張る。


「そりゃあお父さんにしてたので、慣れですよ!」


笑って話す桜に、土方は一瞬目を見開いて、それから微笑んだ。


「…笑って話せるくらいにはなったんだな」

「―――あ」


そういえば、と思う。

前は親のことを思い出すのが辛かった。
今が辛くないわけじゃないが、それでも、


「……思い出を懐かしむくらいには」


昔のことで笑えるくらいには。

そうか、と言った土方は立ち上がって「ちょいと外に出る用事があるんでな」と部屋を出て行った。


たぶん、気を利かせてくれたんだろうと思う。

ほぅっ、と息を吐いて、虚空を見つめる。



ふと思い出したのは、タイムスリップした時に持っていたバッグの存在。

毎日が大変で、忘れていた。

そっと物置を開けると、中にソレがあった。

ついている血が、事故にあったことが現実だと、再三突きつける。


バッグを開けて、中を見ると、入っていたのは財布、ちょっとした化粧品と、それから


「ケータイだ」


まだ充電は切れていないケータイだった。


「まだ結構残ってるなー、充電…………ん?」


表示されている、未読メール二通、という文字。

受信ボックスをあけてみると


「………うそ」


両親からのメールだった。
おそらく、指定した時間になれば自動で送信されるようになっていたのだろう。

事故の後に送られたメールだった。




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