桜が散るように ー 新撰組 ー



夫婦二人で営んでいるというお団子屋さんは、案外盛況らしく、なかなか忙しかった。


「椿ちゃーん!!こっちにお団子ひとつ!!」

「はーい!」


桜が新撰組の一員ということはあまり知られていないが、それでも一応ということで、『椿』という偽名を使うことになった。


「お勘定、ここにおいておくよ。椿さん」


そう言われて振り向くと
一人の男性がいた。


「あ、ありがとうございます。また、いらしてください」


ペコリと頭を下げると、ニッコリ微笑みかけられる。


「あは、そんな堅くならなくていいのに」

「いやー、あははは」


(だって初めての接客だし!)

気さくな人なんだろう、それからも少し世間話をされて、


「じゃあ、そろそろ行くね」

「はい」


小さくなっていく背中を見送る暇もなく、次のお客さんに呼ばれる。




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