桜が散るように ー 新撰組 ー



潜入調査といえど、住み込みじゃないから、夜には屯所に戻る。


「結局、男装しなきゃいけないじゃないですか…恨みますよ土方さん」


暗い夜道を歩く桜の姿は、町娘から一風変わって、男の格好。

笠で顔を隠しつつ、人目を避けて帰る。


「あー、微妙に満月じゃないなぁ」


雲の隙間から見え隠れする月は、少し欠けていた。

上を見ながら歩いていたから、前方から来る人影に気付かなかった。


「こんばんはー」


かけられた声には、なんとなく聞き覚えがあった。


「え、あ、こんばんは…?」


咄嗟に、少し声を低くして、挨拶を返す。

その時、顔を見て分かった。


(この人…、今日店にきた、よね?)


バレたら大変だ、と思い、笠を深くかぶる。



< 169 / 242 >

この作品をシェア

pagetop