桜が散るように ー 新撰組 ー
潜入調査といえど、住み込みじゃないから、夜には屯所に戻る。
「結局、男装しなきゃいけないじゃないですか…恨みますよ土方さん」
暗い夜道を歩く桜の姿は、町娘から一風変わって、男の格好。
笠で顔を隠しつつ、人目を避けて帰る。
「あー、微妙に満月じゃないなぁ」
雲の隙間から見え隠れする月は、少し欠けていた。
上を見ながら歩いていたから、前方から来る人影に気付かなかった。
「こんばんはー」
かけられた声には、なんとなく聞き覚えがあった。
「え、あ、こんばんは…?」
咄嗟に、少し声を低くして、挨拶を返す。
その時、顔を見て分かった。
(この人…、今日店にきた、よね?)
バレたら大変だ、と思い、笠を深くかぶる。