桜が散るように ー 新撰組 ー



恋の1つで表情が変わる俺もまだ若いな、と思わず苦笑してしまう。


思い出すのは少し前のこと。

純白のヒラヒラの服を血塗れにして倒れていた華奢な身体。

絹のような手触りの黒髪を地面に散らして、静かに泣いていた。


それが桜だった。


目が醒めたら、か弱い印象とは一転。

意思の強い目。

女ながら、平隊士より数段強い剣の腕。

それが才能だけの代物じゃないことくらい、掌を見れば分かった。


「アイツは、強いな。山崎」

「……そう、ですね」


愚痴とかはすぐに漏らすくせに、弱さはなかなか見せない。


いつから、だろう。

アイツを愛しいと思い始めたのは。


何故だろう。

アイツを欲しいと思うのは。






< 186 / 242 >

この作品をシェア

pagetop