桜が散るように ー 新撰組 ー
恋の1つで表情が変わる俺もまだ若いな、と思わず苦笑してしまう。
思い出すのは少し前のこと。
純白のヒラヒラの服を血塗れにして倒れていた華奢な身体。
絹のような手触りの黒髪を地面に散らして、静かに泣いていた。
それが桜だった。
目が醒めたら、か弱い印象とは一転。
意思の強い目。
女ながら、平隊士より数段強い剣の腕。
それが才能だけの代物じゃないことくらい、掌を見れば分かった。
「アイツは、強いな。山崎」
「……そう、ですね」
愚痴とかはすぐに漏らすくせに、弱さはなかなか見せない。
いつから、だろう。
アイツを愛しいと思い始めたのは。
何故だろう。
アイツを欲しいと思うのは。