桜が散るように ー 新撰組 ー
だから、
俺が桜の眼中になかろうが
山崎にそう簡単には渡さねえ。
挑発的に微笑んでみたが、山崎は首を傾げていた。
………鈍感め。
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仕事を終えた桜は着替えて、店じまいをしている奥さんに声をかける。
「奥さーん。おつかれさまでしたー」
「はーい」
優しい声に見送られて店から出る。
何故帰るときに男装をするのか、と奥さんに訊かれたが、「最近の世の中は物騒ですから、あはは!」と言うと、なんとか誤魔化されてくれた。
今日はさすがに吉田は現れないだろう、と思っていた。
なのに
(後ろに一人……同じ速度、何回曲がり角で曲がっても一定の距離でついてくる。二日続けてとか…)
フーッと息を吐き、今日は自分から話しかけることにした。
「また忠告ですか?吉田さん」
クルリ、振り返ると
居たのは予想外の人物。
「残念ハズレ。俺は稔麿じゃないよ」
「………川瀬、芳野」
「正解。久しぶり…でもないか」
今は会いたくなかった。