桜が散るように ー 新撰組 ー



だから、
俺が桜の眼中になかろうが

山崎にそう簡単には渡さねえ。


挑発的に微笑んでみたが、山崎は首を傾げていた。


………鈍感め。



*********


仕事を終えた桜は着替えて、店じまいをしている奥さんに声をかける。


「奥さーん。おつかれさまでしたー」

「はーい」


優しい声に見送られて店から出る。

何故帰るときに男装をするのか、と奥さんに訊かれたが、「最近の世の中は物騒ですから、あはは!」と言うと、なんとか誤魔化されてくれた。


今日はさすがに吉田は現れないだろう、と思っていた。


なのに


(後ろに一人……同じ速度、何回曲がり角で曲がっても一定の距離でついてくる。二日続けてとか…)


フーッと息を吐き、今日は自分から話しかけることにした。


「また忠告ですか?吉田さん」


クルリ、振り返ると
居たのは予想外の人物。


「残念ハズレ。俺は稔麿じゃないよ」

「………川瀬、芳野」

「正解。久しぶり…でもないか」


今は会いたくなかった。



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