桜が散るように ー 新撰組 ー
自分のことを知るなら、芳野に訊くのが一番効率が良いんだろう。
けれど
知りたくないことまで知ってしまいそうで。
―――怖い、のだ。
芳野という人物が。
「稔麿が勝手に話したらしいね」
「……貴方が私のことを吉田さんに言ったんですか」
「うん」
「貴方が……私の何を知ってるんですか」
睨み付けるように投げかけた問は、思いもしない答えで返された。
「俺は知ってるよ」
「っ、何故」
「なんでって……幼少時、一緒に過ごしていたからだよ」
「え」
ならば、
ならば可能性が高くなる。
同じ名字。
お父さんとお母さんが言っていた「兄」の存在。
「芳野……貴方は、私と血が繋がって…」
「ないよ」
キッパリと言われた科白にホッとした。
敵が肉親というのは、やはり複雑だから。
「俺と桜は血が繋がってないよ。でも、俺と、桜の両親とは繋がってる」
「……、どういう」
「教えられるのは、ここまで」
芳野はそう言うと、桜の頬に触れる。
悲しそうな、愛しい人を見るような目で。
「早く、思い出して。じゃないと、俺は独りだ」
「………芳野」
悲しい、悲しい人。
(私は、何を忘れてるんだろう)