桜が散るように ー 新撰組 ー



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ドキドキと、心臓が動く。

色恋とかそんな桃色な理由ではなく


「す、すみませーん」

「はいはい…おや?」

「ま、桝屋さん、ですよね、此処」


ようやく敵を探れるという、期待と不安。


「頼まれたお団子五十個、お届けに来ました」

「あー、新しく入った椿ちゃんか。いやー、噂通り別嬪だな」

「え?へへっ、どうも!」


今、お茶を持ってくるから、と言って店の奥に入っていく男を笑顔で見送り


「……始めますか!」


行動を始めた。





「みーっけ」


普通なら炭が入っていると思うであろう箱から香った花火のような匂い。

――――火薬だ。

開けてみると案の定。


武器弾薬がギッシリ。

その奥には


「うぅ…、読めないっ」


何かが書いてある紙。
とりあえず拝借して、懐へとしまう。

そのうち、男が戻ってきた。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


貰ったお茶を啜る。
そして、率直に思った疑問を投げかけた。


「なんでお団子が大量に必要だったんですか?」


すると、男は一瞬焦りを見せ、しかし直ぐに笑顔に戻った。


「今日の夕方にお偉方が沢山くるからね。おもてなしで」

「へー。そうなんですか!」


……嘘だ。
直感的に思う。

ただの炭薪屋に、お偉方が来るわけない。


長州藩の集まりが、今日此処であるんだろう。



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