桜が散るように ー 新撰組 ー
浅黄色のソレを手に取り、袖に腕を通す。
きっと今から赤に染まると分かっていたけど、それでもこの色は綺麗だと思った。
いつもは目立たない服を着ていた。
今は鮮やかな、目立つ晴れの空の色。
「…よし!!」
自分の両頬を叩いて気合いを入れる。
痛みで気を引き締める。
(今から始まる戦いに……容赦は無し。情けもいらない)
襖を開け、広間に続く廊下を歩く。
ふと、空を見上げると、満月に雲がかかっていた。
(…大丈夫、だよね?)
羽織をギュッと握りしめた。
再び広間に行くと、出動できる隊士は皆、準備を終えていた。
………が
「これだけ、ですか?」
明らかに人数が少ない。
それを聞いた沖田が答えを返す。
「いやー、この蒸し暑い季節だからって、だらしないですよねー」
「え?」
「体調不良の隊士が続出ってわけですよ。…直々に鍛えなおしてやらないといけませんかね…?」
「……は、ははっ」
笑顔で恐ろしいことを言うからか、沖田の背後に真っ黒な靄の幻覚が見える。
(皆さん…早く回復してくださいっ)