桜が散るように ー 新撰組 ー



桜は首を傾げる。

(私が『さくら』じゃないってどういう…)

真意が分からない。


「さくらは、人に武器を向けられるような子じゃなかったよ」

「……知らない場所で、一人で居場所を作るには、仕方なかったんです」

「…さくらは一人じゃ、なかったからね。俺が家族になったから」


芳野がそう言った瞬間、桜の頭のなかでとある科白が再生された。


――『ボクが家族になるから』


ツキリ、と頭が痛む。

ああ、知ってる。
思い出した。

案外、あっさりと。


思い出した。
低くなったけど、この声を知ってる。


「……ヨシ兄ちゃん」



なんで忘れてたんだろう。

(私の家族なのに)




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