桜が散るように ー 新撰組 ー



芳野の名を呼んだ瞬間、すべてを思い出した。

あまりに重くて大きい記憶に、少しよろける。

それを好機とばかりに、吉田が刀を桜に降り下ろす。


しかし

高い金属音を出して吉田の刀を止めたのは芳野だった。


「…やだなー、敵を殺らなくてどうするの、芳野」

「俺はさくらの味方だよ。だから、さくらに刀を向けるのは許さない」

「ま、いいけどねー。僕も芳野を利用してたし」


そんな声を聞きながら、桜は必死で記憶を整理する。


(村が壊滅したあの日――…)


あの日は、芳野が初めての任務に出掛けていたときに襲撃があった。

両親…正解に言えば芳野の、桜にとっては育ての親と一緒に逃げ込んだ先には、すでに亡くなり、屍と成り果てていた仲間が沢山いた。


(そうだ、あの時、格子の向こうにヨシ兄ちゃんが見えた瞬間)


芳野の姿に気付かなかった父が唱えた呪文で、三人は光に包まれた。


一回目の、時空移動。




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