桜が散るように ー 新撰組 ー



村が襲われたあの日
ボクは見てしまった。


両親とさくらが時空移動をするのを。

村に伝わる秘密の方法。



それは
【対象一人につき二人の犠牲】


ボクは一人称を俺に変えた。
さくらがどの時代にいるのか分からなかったから、辻斬りをして、時空移動をした。

戻るときにも犠牲は必要だから、二人連れていって。

そして、やっと見つけたさくらは

何もかも忘れて幸せそうだった。




記憶が人格を形成するならば
あの『桜』は俺が知ってる『さくら』ではないのだ、確実に。


それでも『桜』が『さくら』であることは事実で、
俺はそれが嫌だった。


ボクはさくらが好きだった。
家族だった。

俺は桜のことを知らない。
ただの他人。


でも


「ありがとう」

「あの時も思ったけど…、なんでお礼を言うの」

「……、見つけて、くれたからだよ。居なくなった私を、必死で」


ああ、もう。
俺がその言葉に救われたかったんだ。



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