桜が散るように ー 新撰組 ー
安心した。
「ごめん、さくら」
「なんで謝るの?」
「見つけるのが、遅くなってごめん」
そして、お父さん。お母さん。
ごめん。
時空移動をするときに対象に発生する副作用。
【何らかの記憶をなくす】
桜が忘れたのも無理はなかった。
幼かったから、尚更。
それでも、そんなこと冷静に考えられなかったんだ。
ごめん、恨んでしまって。
死に追いやって、ごめんなさい。
お父さんの大きな背中を尊敬してた。
いつか追い越すつもりだったよ。
お母さんの温かさが好きだった。
いつか親孝行したかった。
ごめん。
二人が好きだったこと、忘れてた。
時空移動なんて、するもんじゃないね。
ああ、俺の温度が消えていく。
血と共に。
その時、ドサリと、重いものが落ちる音。
発生源を見ると、息絶えている稔麿。
……たしか、「やまざき」だったよね。
なんとなく、確信があるんだ。
君は知ってるんだろう?
時空移動の方法を。
「やま、ざき君」
「…なんだ」
「桜を、安全な所に。…頼んだよ」
君なら少ない言葉でわかるはず。