桜が散るように ー 新撰組 ー



桜が居た平成という時代は平和だった。

もう、忘れていいから。俺のこと。

俺はもう救われた。
ありがとう。

『桜』のことも好きになれそうだ。


ふっと笑うと同時に、身体に力が入らなくなる。


「ヨシ兄ちゃん…」

「ありが、とう、…さくら」


バイバイ。


「私、ヨシ兄ちゃんのこと大好きだったよ」


うん、俺も。
だから、泣かないで。


やまざき君。
頼んだから。


さよなら、さくら。
好きだった。
ありがとう。


視界が真っ黒に潰されてゆくけれど、もう孤独は感じなかった。



――ありがとう



**********


動かなくなった芳野を見て、ただ涙を流す桜。

山崎が苦しそうな表情をしているのに気付かなかった。


「ヨシ兄ちゃん…。ありがとう」


目を閉じて、まだ温かい額に自分の額をつける。

(『芳野』のこと、苦手だったけど、嫌いじゃなかったよ。さよなら)



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