桜が散るように ー 新撰組 ー




――
―――
――――…




中庭に行くと、誰も居なくてホッとした。



「逃げるなよ、か……。帰る場所なんてないのにね。」


この時代に私の家はないし、頼れる人も居ない。


逃げ出してものたれ死ぬだけだろう。




そのとき、私は中庭に桜の木があることに気がついた。


私は桜の木に近寄って、触れてみる。




目を閉じると、母の言葉が蘇る。





《私があなたに“桜”って名前をつけたのはね。桜のように、何度散っても咲くように……何度辛い思いをしても、立ち直るようになって欲しかったからなの。》





「……お母さん。」


辛い思いとは、ここまで辛くなくてはいけなかったのですか。



立ち直るにはどうしたら良いのですか。






< 22 / 242 >

この作品をシェア

pagetop