桜が散るように ー 新撰組 ー



「両親が事故で亡くなってから、数ヶ月間の記憶がないらしくて」

「わお」

「でも私、その間にすごくいろんなことをした気がするの」


忘れているはずなのに、
悲しくて
温かくて
切なくなる。

思い出したいけど
思い出しちゃいけないような気になる。


――『忘れろ』


そんな泣きそうな声がふいに聴こえることがある。


「アンタ、色々あったんだね」

「うん…。それにね」


桜はカバンをあさり、ひとつの物を取り出す。


「ケータイ?」

「うん、昔の。なんか、開けるのが怖くて」


すると、美紅は戸惑いもなく、パカッと開いて電源を入れた。


「えっ、ちょっ」

「ウダウダするから開けらんないのよ。…ん?アンタ、イヤホン持ってる?」

「え、うん」

「ぷりーず」


差し出されている美紅の手にイヤホンを乗せると、美紅はそれをケータイに繋げて耳に装着した。



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