桜が散るように ー 新撰組 ー



俺のことで…泣いてほしくはなかった。
悲しんでほしくなかった。



だがそれとは反対に
俺のことで泣いてほしい
忘れないでいてほしい
悲しみとして
痛みとしてでも

俺のことをずっと…覚えていてほしい。


―――矛盾している。


分かっているんだ。

アイツの幸せを想うなら
俺のことなど忘れた方が良いのだと。


だからあの言葉を云ったんだ。


『俺のことを忘れて―――幸せになれ』


アイツは言った


『なんで…っ、なんでよ!忘れたくないですよっなんで…っ』


苦しむからだ
俺との記憶があると
お前はきっと泣くからだ


『…嫌ですっ、絶対…!』

『もう戻ってくるな、忘れろ』

『っ、山崎さん!』


アレだけ言ったのに。
願うのは罪だろうか?

ああ、でも死ぬ前にひとつ願うことくらい、許されるだろう。



「…会いたい」



一目でいいから。





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