桜が散るように ー 新撰組 ー


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廃れた村。
崩壊しそうな家の中。

一冊の本が風で捲られる。


桜と山崎が村を訪れたとき、汚れで読めなかった本には、ひとつの昔話が記されていた。





昔、一人の女性が術を編み出した。

時渡りの術を。

一人の対象につき二人の犠牲。
代償は記憶。


あるとき、女は時渡りをした先である記憶を失った。
それは術だった。

かえる方法もなく、仕方なくその時代に定住した。

そこで一人の男と恋に落ちた。

男は優しい人だった。殺戮を嫌い、平和を好んだ。

ある日、村が襲われ、命からがらに男と逃げた女は術を発動させてしまう。


元の時代に戻り、女は泣いた。
術は思い出した。
だが男が嫌う殺戮をして男に会いにいくことは出来ない。


そこで女は自分が死ぬとき、自分の命に呪いをかけた。



もし、違う時代にいる人々の心が通いあい、その気持ちが強かったときは

自分の魂を犠牲に、時渡りの力を与えよう。と。


自分が叶えられなかった想いを、誰かに託そうと。



それは確かに叶ったのだ。



「丞さん、はやく!」

「うるさい、桜」

「ひどい!」


この二人によって。





【END】
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