桜が散るように ー 新撰組 ー



お美弥さんはクスッと笑う。


「良薬口に苦し、ですよ」


確かにそんな諺はあるけど……


「良薬、ではないですよ…」


治らないんですもん。

私の言葉で、お美弥さんとの間を微妙な空気が流れる。

失言…でしたよね、今の。


だけどお美弥さんは笑顔を崩さない。


「新しい、時代が来ますよ、沖田さん」

「…分かってます」


幕府が崩壊する。
新政府ができる。

古い時代は忘れられていく。


「でも、新撰組が時代に流されなかったことで、救われた人が沢山いますよ」

「…そうだと、良いですね」


武士が、刀が、要らなくなる時代が来る。

身分関係なく、みんなが平等になる時代が。


私たちの『誠』は、旧き時代を救えたでしょうか?



「沖田さん」

「……総司」

「え?」

「総司って、呼んで下さい。お美弥さん」





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