桜が散るように ー 新撰組 ー
「気にしないでくださいっ。事故、だったんです。誰かに殺されたとか、そんなんじゃないんですからっ!」
笑顔で言う桜だが、それが逆に痛々しい。
「土方さん、山崎さん。 もう一つ、聞いてほしいことがあるんです…」
(信じてもらえないかもしれない。疑われて、殺されるかもしれない)
桜は俯きそうになる顔を上げて口を開いた。
「私、未来から来ました」
背後で畳が擦れた音がして、山崎が身じろぎしたのが分かった。
「百五十年後の、『平成』と呼ばれる時代から、来ました。 私は…、この時代の人じゃないです」
土方はジッと、動かずに桜の目を見る。
「両親が死んで、すぐに気を失って、どうやってこの時代に来たかは分かりませんし、未来から来たという証拠も、持ってないです。 だけど――」
桜は床に手をつき、頭を下げる。
「信じてください。疑わしいのは重々承知です。でも私は――」
「顔を上げろ」
セリフを遮られ、そう言われて、桜はおずおずと顔をあげる。