桜が散るように ー 新撰組 ー
桜は揺れる的が
自分の視線の先に来た瞬間を狙って手裏剣やクナイを投げていた。
投げた武器は
高速で
しかし寸分の狂いもなく一直線に移動し
結果的に
強風で揺れる的にも命中した、というわけだ。
「これは…すごいな」
山崎は感心した。
「これでも一応、忍者ですから」
へへっ、と笑う桜を見ると、なんだか気が抜ける。
「次は何をするんですか?」
桜が訊ねると
山崎はニヤリと笑い
「…、鬼ごっこ」
と言った。
*********
『いやぁぁあ!ちょっと!手裏剣投げないでください危ないです!』
土方は外から聞こえてきた桜の叫び声を耳にして
持っていた筆を机に置く。
「ふっ。やってるみたいだな」
山崎流の新入生イジメ(という名の稽古)。
屯所内の構造を覚えながら、鍛えられるという一石二鳥らしい。(山崎談)
いつもならバタバタと足音が聞こえるが
今回聞こえるのは桜の悲鳴のみ。
それに
桜は監察になるからか
屯所内の隠し通路(山崎が勝手に作った)も使用して鬼ごっこをしているらしい。
「山崎は優秀だからな。…いつまで逃げれるか」
口角を上げて
桜が逃げまどう様を想像する。