桜が散るように ー 新撰組 ー


―――
――――
――――――…


「……ん」


桜は、開いた襖から差し込む、朝日の強い光で目が覚めた。


(なんか…、久しぶりに夢を見たなぁ)


お母さんとお父さんの夢を見た。
あまりよく覚えてはいないが。

桜は髪を整えるため、手鏡を手に取り、髪に櫛を通すが


「え……コレ」

(涙の跡…?)


頬に、涙が流れ、乾いた跡があった。

横に流れた跡があることから、寝ている時に泣いたんだろう。


桜は、すでに起きて仕事をしていた土方に訊ねようとして


「あ、あの、土方さん…」

「あ?」

「いやあのその…、すみません。寝てないんですか?」


振り返った土方の目の下にある隈を見てしまった。


「仕事が溜まってたんだよ」

「あ、はい」

「……んだよ」

「いえ、あの、訊きたいことがあって!」


眉間にシワを寄せ、凄む土方は、持っている筆で人一人くらい殺せそうな様子だった。

桜はチラッと土方の機嫌を伺いながら訊ねる。


「私…、寝てる時、何か寝言言っていたとか唸っていたとか、ありませんでした?」


そう言うと、土方は少し上を見ながら考えて


「さぁな、まぁ寝言は言ってたな」


と、言って
書類の方に向き直った。



< 95 / 242 >

この作品をシェア

pagetop