許されない、キスをしよう。
『もしもし?』
ケータイから、人の声が聞こえてくる。
ケータイが何かの拍子に繋がったらしい。
「…っ」
怖くて、声が出ない…!
叫ぼうと思うのに、上手く声が出てくれない。
『…?どうかしたの?』
「っ…助けてーっ!!」
涙ながらに、私は声を振り絞って叫んだ。
「チッ…」
男は忌々しげな舌打ちと共に、私のケータイを踏みつけた。
バキッと音が響いて、ケータイは無残な姿になる。
…私の希望が、断たれた。
「…ふん。これで邪魔されるものは無くなったわね。」
鼻で笑って、女はポケットに手を入れる。
「まずは…この綺麗なお顔からかしら?」
そう言うと、女はポケットから鈍く光るものを取り出した。