許されない、キスをしよう。
「顔だけの女が、蒼に近づくんじゃないわよ!アンタと蒼は、住む世界が違うんだから!」
ものすごい剣幕で、女は包丁を振り上げる。
ダメだ…
私はギュッと目を瞑った。
「…こっちです!」
覚悟した痛みがこない。
それと同時に、誰かの声が響いてきた。
「警備員さん、こっちです!」
声と共に、バタバタと足音が近づいてくる。
「ヤバイ、サキ、逃げるぞ!」
男が私の目の前にいる女に言う。
「待って!まだコイツを…」
「そんなこと言ってるヒマねぇんだよ!」
男は半ば強引に、女を引きずるようにして逃げていった。