許されない、キスをしよう。
ドンッ
前を見ないで走っていたから、おもいっきり誰かにぶつかってしまった。
「ごっ…ごめんなさい!」
全然ダメダメだけど、私もこれでも女優のはしくれ。
泣き腫らした顔なんて見られなくない。
だから、うつむいたまま謝った。
「律萪…ちゃん?」
ぶつかった人が、私の名前を呼んだ。
あわてて顔を上げると…
「湊くん…」
どうやらぶつかってしまった人は、湊くんらしかった。
「ごめんね湊くん。…私、急いでるから。」
湊くんと目を合わせられないまま、私はその場を去ろうとした。