許されない、キスをしよう。




「待って律萪ちゃん!」


突然ぐいっと腕を引かれて、私はそのまま湊くんにもたれかかる体制になってしまった。




「湊くん…?」


「前、ADさん。」



そう言われて前を見ると、お弁当をいっぱいかかえたADさんが歩いてきた。
ADさんもお弁当で前が見えていないみたいで…


私が進んでいたら、きっと今ごろお弁当をひっくり返していただろう…。




「あ…ありがとう。」


お礼を言うと、湊くんは微笑んでくれた。




「…大丈夫?これから別の仕事あるの?」

私の顔を覗き込みながら、湊くんが尋ねてきた。



「…ううん、帰るだけ。…てかさ、今、顔ヒドイからあんまり見ないでほしいな。」

両手で顔を隠しながら言うと、湊くんは急に笑いだした。



「今さらだよ。それに、律萪ちゃんは泣き顔も可愛いから安心しなよ。」

意地悪く笑いながらそう言う湊くんに、少しだけ笑いがもれた。




「もー…湊くんのばか。」

私が言うと、湊くんは優しい微笑みを返してくれる。


「やっと笑った。」


「…え?」


「前も言ったじゃん。律萪ちゃんには、笑顔が一番似合うんだから。」


「湊くん…」




湊くんの優しさに、止まっていた涙がまた溢れそうになる。
…ダメダメだなぁ、私。
こんなんじゃ、女優だなんて言えないよ…。







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