許されない、キスをしよう。
「湊ー!時間おしてるから早く行くぞー!」
廊下の向こう側から、湊くんのマネージャーさんが湊くんを呼ぶ。
「ごめん、行くね。またね。」
湊くんは笑みを残して走っていってしまった。
「…私も、皆川さんのとこ行かなきゃ…。」
一人そう呟いて、私は皆川さんの待つ駐車場へと急いだ。
「律萪、ご苦労様。今日は打ち合わせもないから直帰する?」
車のドアを開けると、皆川さんが明るく話しかけてくれる。
…聞かなきゃ。
きっと、社長も皆川さんも私のためにずっと黙ってくれていたんだよね。
蒼との噂がたっても、私と蒼の関係がこれ以上悪くならないように、蒼の事務所から圧力がかかっているのを私に黙ってくれていた。
だから…
私も、覚悟を決めなきゃいけないんだ…。