許されない、キスをしよう。
「律萪ちゃん、あんまりはやく行かないでって。」
店を出て、私は蒼より先に歩く。
…顔赤くなってるのなんて絶対見られたくないし!!
「…っ律萪ちゃん!」
いきなり、蒼の声が大きくなる。
「え…」
…私は、信号が赤なのに気付かないまま、横断歩道を突っ切ろうとしていた。
車がスピードを緩めずに走ってくる。
…私、なにやってるんだろう。
引かれるのを覚悟した瞬間、なにかに引っ張られる感覚がして…
「…危なかった。律萪ちゃん、前見て歩かなきゃダメだよ。」
頭の上から、蒼の声が降ってきた。
「…私…。」
私は、信号の前で蒼に抱き締められていた。
…どうやら、引かれる直前に蒼が引っ張ってくれたらしい。
「だから言ったのに。こういう時、前を歩かれちゃうと助けられないから。」
そう言うと、蒼は私の顔を見て微笑んだ。