許されない、キスをしよう。
「…カット!」
プロデューサーのカットの声がかかってもなお、他の人たちは一歩も動かない。
「…あの、私またなにかやらかしちゃいましたか?」
…自分ではけっこう上手く演じたと思ったんだけど。
ガックリと肩を落として、私はプロデューサーの方に視線を向ける。
「…白川、頑張ったな。一日でこんなに変わるものだとは思わなくて、正直びっくりしたよ。」
プロデューサーはぱちぱちと手をたたいて笑いかけてくれる。
「あ…ありがとうございます!」
私は精一杯頭を下げた。
はじめて、演技をほめてもらえた気がする。
「じゃあ次のシーン10分後に入るぞ!」
プロデューサーはてきぱきと次のシーンへの準備の指示を出していく。
私はパイプイスに腰掛けた。