許されない、キスをしよう。
「律萪!」
皆川さんがこっちへかけてきた。
「あれ?皆川さん別の仕事でこっちに来られないんじゃ…」
「寝坊しないか心配で急いで来たのよ。それよりもどうしたの、急に。」
皆川さんが不思議そうに私を見つめる。
「え?」
「急に演技があんなに上手くなるとは思えない。…昨日のことと、関係あるの?」
鋭い指摘をする皆川さんに、私はビクリと肩を跳ねさせた。
「…やだ、なんですか昨日のことって。なんにもないですよ。」
私がお茶を飲みながら言うと、皆川さんは半ば呆れたように息を吐く。
「プライベートにまで深く干渉はしないつもりだけど。一つ覚えておきなさい。ゴールデン枠のドラマに出るってことは、あなたも芸能人の一人なのよ。スキャンダルだけは注意して。」
「…はい。」
皆川さんの気迫に押されて、私は素直にうなずいた。