いちごいちえ
「じゃあまた後でね〜!!」
「はい、行ってきます」
笑顔で見送ってくれる由良さん達に、私もつられるように笑って手を振った。
瑠衣斗の家の前を通り、ほとんど日の暮れた夕焼けの道を、下駄を鳴らしながら歩く。
燃えるような赤い空から、紺色に一番星を輝かせる空は、なんとも切ない。
そんな中、ヒグラシの鳴き声が聞こえてくるたびに、余計に切なさを強くするようだ。
繋がれた手がしっとりとしていて、やたらとドキドキとする。
息が詰まりそうな雰囲気の中、なんとなく会話がないまま歩き続けた。
な、なんか喋った方がいい…よね。
でも、なに話せばいいんだろ。
考えれば考えるほど、意識しすぎて話の種が出てこない。
なんとなく瑠衣斗を見る事すらできなくて、意味もなく恥ずかしくなってしまう。
いつもと違う雰囲気に、いつもと違う瑠衣斗。
ひしひしと感じる右隣の存在感に、歩き慣れない浴衣と下駄のせいもあってか、足元もおぼつかない。
しまいにはあまりにも瑠衣斗が静かなので、逆に不安になってくる。
そういえば、るぅ何にも言ってくれなかったけど…ひょっとして私、浴衣似合ってないのかな。
感想がないのはちょっと寂しいかも……。
なんとなく寂しい気持ちが胸に充満して、余計な考えが頭の中を支配していく。
さっきまであんなに楽しみだったのに、一気にこんな気持ちになってしまうなんて、自分でも感情のコントロールができていない事がよく分かる。
「あ…のさあ」
「えっ!?は、はい?」
まさか声を掛けられると思っていなかった私は、あからさまに可笑しな返事をしてしまい、ハッとした瞬間には青くなる羽目になった。