いちごいちえ




ここが、るぅの弟さんの……。

私を紹介したかった人って、弟さんだったんだ。



瑠衣斗が慣れた手つきで、お墓を綺麗にしていく。


それでも、きちんと手入れがされており、比較的綺麗に保たれている。



傍らでももちゃんが大人しく腰を下ろし、そんな瑠衣斗を見守っているようだ。




何か手伝おうと、持ってきた花束を飾り付け、その花束の中に一緒に入れられていた包みを開けると、そこには線香が入っていた。



一通り綺麗にし終えた瑠衣斗が私に振り返り、私から線香を受け取った。



ポケットから取り出したライターで、瑠衣斗が火を付ける。


柔らかな線を上げた線香を、瑠衣斗が墓前に供えると、私はその隣に寄り添った。




そっと瑠衣斗を見上げると、じっと彫られた文字を見つめた瑠衣斗の横顔が、心なしか穏やかで、私の胸が締め付けられる。



人が死んだら、どうなるかなんて誰にも分からない。


その人の意識は、一体どうなるのだろう。


"無"になってしまうのか。その人の意識は、どこへ行ってしまうのだろうか。


消えてなくなって、それで終わりなのかな。




見つめていた瑠衣斗が、そっと目を閉じて手を合わせる。


線香の香りが風に運ばれてきて、私は前に向き直った。



手を合わせ、ゆっくりと目を閉じる。



木々のざわつく音に、虫や鳥達の声が、クリアに聞こえてくる中、そっと心の中で久斗君に問い掛ける。






るぅを、ずっと見守っててあげてください。


るぅの幸せを、願っててあげてください……。


るぅと、出会わせてくれて、…本当にありがとう。



そして、るぅを守ってあげてください。




私の願いは、久斗君に届くのかも分からない。

でも、すぐそばで聞いててくれているような、そんな気がした。
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