いちごいちえ
そっと目を開けると、眩しい光が目一杯に刺激する。
風を感じ、夏の匂いがして、太陽の日差しを肌で感じる。
この世界は、生きているからこそ、感じられる事ばかりだ。
「もも」
「…うん?」
ポツリと呟かれた瑠衣斗の声に、そっと瑠衣斗に視線を向ける。
強い日差しが、瑠衣斗の髪を金色に染めていて、なんだか出会った頃の瑠衣斗を見ているようだ。
「久斗に、報告した」
「……なんて?」
微かに口元に優しい微笑みを浮かべ、瑠衣斗が前を見つめる。
まるでその目の前には、久斗君が居るかのように。
「もうお前に遠慮しねえからな、って。ももを幸せにするって…約束した」
「るぅ…」
「ここにももを連れて来たのも、俺なりのケジメ。久斗には…嘘も誤魔化しも効かないしな」
そう言って、少し照れ臭そうにした瑠衣斗に、目頭が熱くなる。
そして私は、一つの事に気付く。
人は死んでも、無にはならないと言う事を。
こうして、瑠衣斗や私の胸の中に、ずっと想いが残るんだ。
その人を想う、気持ちが。
だから、無になんかならないんだ。
「また、ももと一緒に会いに来るからって。そう言っておいた」
そう言って私に向かって微笑んだ瑠衣斗に、私は自然と涙が零れていた。