いちごいちえ
「お前、短時間の間に泣きすぎだ」
「ぐすっ…だって…」
嬉しかったんだもん。
聞こえたか聞こえなかったのか、言い切る前に優しく抱き寄せられた。
優しく包み込まれて、しがみつくようにして瑠衣斗の背中に腕を回す。
瑠衣斗の甘くて爽やかな香りが、私の心を更に切なくさせる。
手の中の確かな温もりと、強くて優しく響く鼓動。
その全てが、愛おしくて堪らない。
「正直…迷ったんだ。連れてこようか」
大きな手のひらが、私の頭を撫でてくれる。
胸から響く瑠衣斗の低い声に、そっと頷く。
きっとそう迷った事さえも、私のためを考えての事なんだって、安易に予想できてしまうんだ。
だからこそ、何も説明も前置きもなかったのだろう。
「でも、ももだから全部見せようと思った。知っててほしくて」
返事の代わりに、私は瑠衣斗の背中に回した腕に力を込める。
そしてそのまま、濡れる頬を胸に押し付けた。
「もものおかげで、ケジメが付けれた。だから…ありがとうな」
優しい声音に、頭を横に振る。そしてそのまま、再びギュッと瑠衣斗を抱き締めた。
ありがとうなんて、言われる立場なんかじゃないよ。